ID : Pass : 新規登録
The Association of Small Business Entrepreneurs in Hokkaido
〜私たちは地域の発展と人間尊重の経営を目指す経営者集団です〜


 【随 筆】 『混乱の中で思うこと』

 


釧路支部会員 森川 浩一氏

 

 誰もが中流意識をもち、安心して暮らせた日本は、今や経済的な理由で犯罪が多発し、貧困問題が伝播しつつある。社会の3つのセーフティーネットである「雇用」、「社会保障」、「公的扶助」が綻び始めている。一度足を滑らせたら最後まで墜ちてしまう「スベリ台社会」が急速に表面化しつつある。


 同友会運動を通じて情勢を勉強する機会を得て、雇用の底が抜けるような事態が迫りつつあることは十分認識していたが、昨年のサブプライムローン問題以降、世界は急速に不安定になっている。不況とは隣の人が失業することで、恐慌とは自分が失業することと頭では解ったような気がしていたが、実際に自分の身に降りかかるまでは、対岸の火事を見ている気分でいた。「貧困の連鎖」という言葉がある。日本の教育は金がかかりすぎる。つまり貧困のために高い教育を受けられず、高い教育がなければ仕事に就けないという状況が続いている。


 中小零細企業の担う役割は大変重要だ。セーフティーネットの一番目である「雇用」を担っているのは中小企業だ。しかし、政策における中小企業対策はいつも後手に廻っている。「個人の貧困(国は日本には貧困はないと云っている)」問題と「中小企業の経営危機」の問題はよく自己責任論で語られる。自己責任論で片付けて良いのだろうか。同友会が提唱する、「人間らしく、安心して暮らせる社会」の実現のためには、輸出中心の大企業保護政策ではなく、内需拡大型の各地域の中小企業振興策を優先し、雇用を維持拡大し、社会保障を充実させ、万が一の場合には必要な生活扶助が受けられる体制をつくるべきだ。そして国民的なセーフティーネットの中心的な役割を中小企業が担っていることを国家がしっかりと認め、金融対策、技術支援などの充実が必要ではないだろうか。


 最近感銘を受けた話がある。ある障害者の団体は、政治へ訴えかけや環境改善にとても熱心に取り組んでいる。その熱心な理由は、親として子供たちが人間らしく安心して暮らせる社会の実現を目指しているからと聞いた。釧路の地域で起きている様々な問題を対岸の火事のように傍観していてはならない。自分の問題として捉えて運動を広げていく必要がある。そのために、中小企業振興基本条例が制定される。良い経営者、良い会社、良い環境を目指す同友会会員の力で、人間らしく安心して暮らせる社会づくりをしていかなくてはならない。その担い手を増やすために、例会による勉強会や私たちの辞書のページを増やす会員増強が必要であることを痛感している。

 

投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。