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The Association of Small Business Entrepreneurs in Hokkaido
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「ピアノは生き物??」

 



 

(株)エルム多米楽器釧路支店 ピアノ技術営業課 佐藤圭介(釧路支部)

以前、みけた会の例会や幹部大学同窓会総会の席で、「調律の仕事について一言で」と言われ、皆様の前で「調律とはピアノに命を吹き込む仕事です。」と申し上げました。ピアノと言う「物体」に「命を吹き込む」なんて何を言っているのかと思われた方も多いでしょう。
 調律は基本的に物理と数学の世界です。ピアノの音程は弦振動が作っているので、弦の振動数を張力を変えることによって音程を変化させています。調律中に考えている事は「下降5度の唸りが5秒間に6回有るから0.5Hz高いな〜」とか「長3度の唸りが1秒間に8回あるから4度が広いな〜」とか「同音の唸りがなくなったから合ったな〜」と言う感じです。「調律=音程を合わせる」だけであればこのような計算や音の聞き方だけで十分成り立ちます。しかし、こ
れでは音合わせに過ぎません。なぜなら、プロのピアニストなど芸術家が求めているものは違います。音程が合っているのは当たり前で、そのピアノが自分のイメージしている音楽を表現できる音か?また、その音を思うようにコントロールできるのか?などをピアノと調律師に求めてきます。その要求に応えるピアノに仕上げて調律と呼べると思います。
 ピアノは良い状態になると「物体」から音楽を奏でる「楽器」に変わります。
どうしたら「物体」を「楽器」に変えることが出来るのか?方法は色々あります。求めていることは人により違うので答えは一つではありません。また、時代により変わります。そのために常に研鑽し続けなければなりません。目に見ない物なので感覚や感性も磨かなければなりません。芸術家の要求に応えられる技術力を備えて初めて調律師と呼べると思います。
 ピアノが良い状態を保てるか、また、悪くなるかは調律師次第です。数ある楽器の中で基本的に演奏者が自分で使う楽器を自ら調律できない楽器はピアノだけです。調律師としての役割をしっかり認識していたいです。

 


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