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The Association of Small Business Entrepreneurs in Hokkaido
〜私たちは地域の発展と人間尊重の経営を目指す経営者集団です〜

「あの夏、この夏」
 


(株)川湯観光ホテル 社長 中嶋康雄(釧路支部会員)

 

 あんなに暑かった夏の足音が、ドップラーの如く遠ざかって行く。今夏の道内の気温を押し上げた一つの要因として、「第88回全国高校野球選手権大会」を忘れるわけにはいくまい。

駒苫の3連覇が大いに期待されたが、結果は既報のとおりである。逆転につぐ逆転劇で勝ち上がってくる同校の活躍ぶりは、マスメディアを通じ、連日伝えられた。

私はそれを極めて冷静な態度で受け止め・・・というよりは、率直な処さほど関心があるとはいえなかったのが偽らざるところだ。少なくとも8月20日(日)までは。いよいよその結論が汗と涙の結晶になるその日、それまで関心の薄かった高校野球、駒苫の戦いぶりをひとめ見ようとテレビをつけた瞬間、夏の太陽光線が全身を包み込み、自らを21年前の夏に引きずり戻した。あの夏も暑かった。見上げると青空に白く輝く小さな球体。「何だあれは?冥王星か?!いやライトフライだ!」交互に繰出す足は頼りなく、危うげな態勢でグラブの先に捕球完了!「そうだ!高校球児だったんだ!」

自他ともに認める運動オンチの自分だが、確かに21年前の夏、白球を追いかけていたのだ。途端に画面からナインの濃い汗の匂い、スパイクが土を噛む感触が滲み出し、鼻の奥につんと刺激があった次の瞬間、画面が波を打ったように見えた。甲子園はおろか、地区大会もままならぬチームではあったが、そこには確かに我がチームの田中投手や本間選手、香田監督が存在した。「ああもう21年も経ったんだ」

そして翌日、今大会の結論に直面した駒苫ナインを彩っていたのは、予測を超越したすがすがしさだった。試合終了直後、田中投手のあの愛すべき笑顔が映し出された瞬間、二日間の死闘の立会者として、何か救われた思いがしたのは果たして自分だけであろうか。

駒苫率いる香田監督、34歳。「グラウンドに立てば選手の体調が判る」とばかり練習では自らグラブをはめ守備に入ったり、自分の采配ミスを選手に詫びるなど、人間味溢れる監督に自分を重ね合わせてみると、何かが違う事に気付かされる。

監督就任時に「北海道に優勝旗を持ち帰るのは俺達だ」と言った事の意味を大いに考えさせられた今大会であった。現代社会は何かとプライバシーの確保、個人情報と騒がれるご時世であるが、人と人との有機的な繋がりを大事にしていきたいと考える。ありふれた旅館ではあるが、わずかな場面でも、旅の思い出になる施策を講じるべく、秋の夜長、次なる作戦を練りこんで行きたい。


 

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